天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

麒麟(きりん)

野毛山動物園にて

 鯨偶蹄目キリン科に属する。和名「キリン」は、鄭和が連れ帰ったキリンを「麒麟」として永楽帝に献上した故事にちなみ、近代になって命名されたものであるという。中国語では「麒麟」ではなく、「長頚鹿」(長い首の鹿)と呼ぶ。心臓から脳までの高低差は約2m。脳まで血流を押し上げるので、動物の中で最も高い血圧を有する。


  熱たかき夜半に想へばかの日見し麒麟の舌は何か黒かりき
                     中城ふみ子
  首の長さゆえ幼らに愛されてキリンは高き柵に囲わる
                     永田和宏
  対岸にキリンは首の見えいたり時間ゆるやかに戦がせながら
                     永田和宏
  若き日の苦しからむかびしびしと首打ちかはす麒麟を見れば
                     小池 光
  その柵の高さがすべて 園内でまっすぐ老化してゆくキリン
                     足立尚彦


  雌の尻嗅ぐ雄見ればエロおやぢと言ひし少年麒麟の柵に