天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

茶畑

小夜の中山にて

 茶は葉を飲料とするツバキ科の常緑樹で、チベットあたりが原産地。漢代の中国ですでに飲まれていた。日本には奈良時代に伝来し、鎌倉時代以降に各地に広まった。静岡、宇治、狭山などが名産地。一人当たりの消費量は、英国が最高というから面白い。紅茶の一大産地インドを植民地にしていた時代の文化が、国中に定着したのだ。英国の気候に適合したことも大きな原因であろう。
 俳句では、茶摘が春の季語で、傍題に茶畑、茶摘女、一番茶 などがある。なお、「新茶」となれば夏の季語。


     山門を出れば日本ぞ茶摘うた      菊舎
     我庭に歌なき妹の茶摘かな      正岡子規
     むさし野もはてなる丘の茶摘かな  水原秋桜子
     茶畑に川霧やさし奥三河      文挟夫佐恵


  わが母の今日は出で立ち茶を摘むにわれもわが児も出でて
  摘みつつ                 古泉千樫


  茶畑は花も蕾もましろにて果てなき越えゆくさやの中山
                      窪田章一郎
  茶つみうたかすかにひびく岡のへに桐のはなちり風ぬるく吹く
                       尾上柴舟
  作業終へて抱へ帰りゆく籠のうちなまの茶の葉の匂ひがあまし
                      石川不二子