梅雨
ばいう、つゆ。黴雨とも書く。語源は、梅の実が熟するころの雨、あるいはカビを生じる雨を意味するという。夏至を挟んで前後二十日ずつの雨の期間を指す。「走り梅雨」は、本格的な梅雨に入る前のひと時の梅雨模様。「梅雨明り」は、梅雨期の夕方、雨がやみ空が明るくなること。「梅雨闇」は、梅雨のころ、ことさら暗く感じられる夜のやみ。北海道には梅雨は無い。
古歌では「さみだれ」が主で梅雨はでてこない。それも平安時代以降に、夏の題で詠まれた。
五月雨にもの思ひをれば時鳥夜ふかく鳴きていづち
行くらむ 古今集・紀 友則
いとどしく賎(しづ)の庵のいぶせきに卯の花くたし
五月雨ぞする 千載集・藤原基俊
樗咲くそともの木陰露落ちて五月雨晴るる風渉るなり
新古今集・藤原忠良
子をおもひ婿をおもひてねつかれず空梅雨の夜にきく遠蛙
岡 麓
ひとときの梅雨の晴間にさ庭べの軍鶏(しやも)の羽ばたき
見てゐるわれは 斎藤茂吉
この朝け井戸の中より白きもの羽ばたきて飛び梅雨も晴れたり
前川佐美雄
梅雨闇に梟なけばながく病む高見順を思ふこころ萎ゆるまで
木俣 修
走り梅雨陽は晴れゆくをしづかなる対峙のこしし論の
経緯(ゆくたて) 馬場あき子