天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

梨(1)

わが食卓より

 バラ科ナシ属の落葉高木。栽培果樹。春に白色の五弁花が咲き、秋に実が成熟する。二十世紀(青梨の代表)、長十郎(赤梨の代表)などが有名で、季語「梨」の傍題にもなっている。もみじも美しい。万葉集には作者不明ながら以下の三首が載っている。


     水なしやさくさくとして秋の風  惟中
     小刀の刃に流るるや梨の水    毛条


  黄葉(もみぢば)のにほひは繁ししかれども妻梨の木を手折り
  かざさむ            万葉集・作者不詳


  露霜の寒き夕の秋風にもみちにけらし妻梨の木は
                  万葉集・作者不詳
  梨棗(なつめ)黍(きび)に粟つぎ延(は)ふ葛の後も逢はむと
  葵花咲く            万葉集・作者不詳


  をふの浦にかたえさし覆ひなる梨のなりもならずもねて語らはむ
                    古今集・東歌
  かたえさす麻生(をふ)の浦梨はつ秋になりもならずも風ぞ身にしむ
                  新古今集宮内卿