天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雪の歌(2)

北鎌倉円覚寺にて

 古典和歌の続き及び近世・近代に詠まれた雪の歌を。


     我雪とおもへばかろし笠の上       其角
     応々といへど敲(たた)くや雪の門(かど)   去来
     雪片のつれ立ちてくる深空かな    高野素十


  かきくらし猶ふる里の雪のうちに跡こそ見えね春は来にけり
                   新古今集宮内卿
  まつ人のふもとの道は絶えぬらむ軒端の杉にゆきおもるなり
                   新古今集藤原定家
  秋まではふじの高嶺にみし雪を分けてぞ越ゆる足柄の関
                   続古今集・藤原光俊
  白妙の真砂の上に降り初めて思ひしよりも積るゆきかな
                  新続古今集・飛鳥井雅世
  てる月の影の散り来る心地して夜ゆく袖にたまる雪かな
                        香川景樹
  軒近み木ぬれにつめる雪あつめたぎる釜にし煮つつたのしむ
                       伊藤左千夫
  ひとすぢの本郷どほり夜はふけて年くれがたの雪しづかなり
                        金子薫園