天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ゆすらうめ

円覚寺・龍隠庵にて

 漢字では、桜桃、山桜桃、梅桃などを当てる。たんに「ゆすら」とも言う。中国原産、バラ科の落葉低木。江戸時代初期に渡来。小さな球形の実が六月頃に熟し、甘酸っぱい。


     散るときの来てちらちらと梅桃(ゆすらうめ)
                      川崎展宏


  ゆすらうめの渋く酢味(すみ)ある一粒を倦みてさびしき
  折々に摘む                植松寿樹


  一枝のゆすら梅の実を貰ひたり鈴生りの実のくれなゐ深く
                       竹中皆二
  ほのかなるものなればふとゆすらうめ色づくごとく告げ
  なば告げむ               馬場あき子


  花あんず紅きかたへのゆすらうめ遅く咲きつつ早く散りにき
                       相良 宏
  灯ともれる家にはわたしが待つことを必ず忘るな雨の桜桃
  (ゆすらうめ)               河野裕子