瀧(1)
河川の流れが垂直に近い崖を落下する場所。華厳の滝や白糸の滝は、溶岩流がせき止められてできたものという。落下する水の渦流によって滝壁の下部がえぐられて滝が漸次後退する場合もある。その典型がナイアガラの瀧で、年平均1.3mずつ後退しているらしい。
滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半
はるかなる滝壺にみどりの水注ぎ長き会議に孤なるときをり
小野茂樹
垂直の光となりて落つる滝めぐりの音を統(す)べて轟く
田中子之吉
瀧の水は空のくぼみにあらはれて空ひきおろしざまに落下す
上田三四二
滝を落つるげにうつくしき蝶の羽根雷雨は誰の言葉であるか
山田富士郎
ちりちりと岩を這うありとびはねてしぶきとなるあり滝の
おもては 沖 ななも
後藤夜半の「滝」の句は、箕面において昭和4年に詠まれた。一方、上田三四二の「滝」の歌は、那智の滝に来て昭和49年に詠まれた。俳句と短歌の詩形の特徴をよく表している。三四二の歌は、夜半の句の本歌取りであろう。