天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山桜を恋ふ(1)

横浜市東俣野町にて

 どうも今年は天候不順で桜狩が思うようにならない。あっという間に満開になり散ってしまう。山桜は早や葉桜になりかけている。ソメイヨシノの華麗さも良いが、日本古来の野趣と気品のある山桜も見ずにはおられない。それで遅ればせながらわが住む横浜市東俣野の林を巡って探した。すぐ近くに、旧住友財閥の俣野別邸が横浜市管轄の庭園になっている。まだ半分ほどが整備されているに過ぎないが、山桜の木もある。また農家の裏山でも見かける。満開の花をつけたまま根元から割れて倒れている大木の桜があったが、まことに壮絶な最期と見えた。


     真裸に合歓の木ねむる桜かな
     倒れても花咲きみつる桜かな


  手を伸ばし盗りたきほどの高さなり垣根を越えて夏蜜柑垂る
  せつかちの大和心を人問はばひと足先に散る山桜
  人知れず不法投棄をするさまをひたに見つむる山さくら花
  根元から割れて倒れし桜木の枝に花咲くあはれなりけり