春のゆったりした気分に潮の音は快い。ただ早春の潮は荒々しい面が残る。特に春一番、春の嵐の頃は勇壮な光景が見られる。
夕鳥の翔(と)び立ちゆきし多々良浜ゆたにたゆたに寄する
春潮(はるしほ) 山埜井喜美枝
髪梳(す)けるちからこもりてひたぶるに春の潮(うしほ)を
ひきしぼるなり 雨宮雅子
西海のはてなる島にわが来たり渚に立てば碧(あを)し春潮
来嶋靖夫
みづあさぎに凪ぎし春潮見はるかす岬に立ちて思ふ人ある
春日井建
春潮(はるしほ)をはるかに思へばおほははもははもむすめも
とはにをとめ子 藤井常世
会うために梳きている髪あらあらと輝(て)りて春浅き潮の匂い
道浦母都子