天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

土の歌

赤土

 砂が極細粒になり水分で固まったものが土であり、乾くともろく崩れやすい。土には、地(地面、大地)の意味もあり、歌に多く詠まれているが、ここでは土壌の意味で詠われた例を取りあげる。和歌では、独特の色を持つ土がよく詠まれている。埴は赤土(赤黄色の粘土)。埴のあるところが埴生。


  白浪の千重(ちへ)に来寄する住吉(すみのえ)の岸の黄土
  (はにふ)ににほひて行かな    万葉集車持千年


  大和の宇陀の真赤土(まはに)のさ丹(に)つかばそこもか
  人の吾を言なさむ        万葉集・作者不詳


  おりたちてこひぢにみゆる手輿(たごし)あれば何か小山田
  (をやまだ)うちもかへさむ       選子内親王


  たらちねの母をうづめし赤土に萱草ひとつ萌えてありけり
                      藤沢古実
  しら玉の心は光れひもじくばあらがねの土もなほ啖(くら)ふべし
                      中村三郎
  ひたすらに泥炭となる草生ありこころ貴(あて)なる泥といふべし
                      坂井修一