鴉(からす)
カラス科の鳥の総称。全国に分布。ハシブトガラスは太い嘴でカアカアと啼き、ハシボソガラスは細い嘴でガアガアと啼く。鳥の中でもカラスは古来、歌に多く詠まれている。身近で賢いからであろう。ただ大群になると不吉の前兆を思わせ怖がられることになる。その死骸を目にすることは稀だが、たまたま歩道に横たわっているのを見た。それが右の画像である。死因は不明。黒い羽根が酷熱の太陽にギラギラ光っていた。
あかときと夜烏鳴けどこの丘の木末の上はいまだ静けし
万葉集・作者未詳
夜もすがらこひてあかせる暁はからすのさきに我ぞ
なきぬる 和泉式部
夜烏は高き梢に鳴き落ちて月しづかなるあかつきの山
風雅集・光厳院
ゆく年をおくりの翅(つばさ)雪にぬれて寒きからすの
夕暮のこゑ 晩花集・下河辺長流
枝にゐる鴉ばかりをくもりにて霜よりしろきありあけの月
安藤野雁
ひさかたのしぐれ降りくる空さびし土に下りゐて鴉は
啼くも 斎藤茂吉
大川の水くらくゆらぐ夕まぐれ鴉とびゆくいくつもの鴉
高田浪吉
マンションの窓に大鴉の気配してポオのごとくに生きよ
と告げる 藤原龍一郎
ひもすがら灯して働く作業場のわれに日暮れを告ぐる野鴉
伊田登美子
一筆のはしるごとくに過(よぎ)りたる大烏なりそののちの雪
神谷佳子