天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

飯(1)

わが食卓から

 飯を「いひ」と言う場合、「い」は接頭語で「ひ」は霊力を表す。それは、飯を食べると力になるからである。稲作の歴史は古いが、米だけの飯(白飯)は神に供える尊いものであり、祝祭時に炊かれるものだった。日常的には、粟、稗、麦など米以外の穀物のみを炊飯したものが普通だった。


  家にあれば筍(け)に盛る飯(いひ)を草枕旅にしあれば
  椎の葉に盛る          万葉集有間皇子


  しなてるや片岡山に飯に餓ゑてふせる旅人あはれ親なし
                      聖徳太子
  牛飼の子等に食はせと天地の神の盛(も)りおける麦飯
  (むぎいひ)の山             平賀元義


  冷飯に湯をかけ食ひつつわがむかふ庭には紅し芍薬の花
                      松村英一
  それとない監視を背(せな)に感じつつわれ差入れの赤飯
  食ふも                 渡辺順三


  清らけき山の水にて炊きくれし白飯(しらいひ)のゆげに
  眼鏡くもりぬ              山下陸奥