天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

窓(1)

鎌倉文学館(旧前田侯爵邸)から

 窓は「目門(まと)」からきている。壁や屋根に穴を開けて室内に外光や空気を入れるようにしたものである。英語圏で窓が象徴するものには、空気、光、知識、理解、意志疎通、意識、精神への出入り口 などがある。ただ日本の詩歌においては、窓があからさまな象徴に使われることはないようだ。


  窓越しに月おし照りてあしひきの嵐吹く夜は君をしぞ思ふ
                 万葉集・作者未詳
  恋しくば夢にも人を見るべきに窓うつ雨に目をさましつつ
                後拾遺集・大弐高遠
  窓近き竹の葉すさぶ風の音にいとどみじかきうたたねの夢
               新古今集式子内親王
  さよふくる窓の燈つくづくと影もしづけし我もしづけし
                      光厳院
  やまおろしのたえず音する窓の中にあやしく残るよはの
  灯(ともしび)             細川幽斎