天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

朝日を詠う(2/4)

世界の朝日(webから)

 あさづくひは、朝方の日で朝日に同じ。朝日子は、朝日に親しみの意を表す接尾語「こ」を付けた言葉。以下の歌には、春、夏、秋それぞれの朝日が入っている。
一首目の為兼の歌は、京極派和歌の独壇場とされる迫真の自然詠の一つで、明暗の対比、光線、そして空気感を捉えた、撰者為兼の最高傑作とされる。ちなみに玉葉和歌集は、勅撰和歌集の中で最多数の、約2800首の和歌を納めている。



  枝にもる朝日の影のすくなさにすずしさふかき竹のおくかな
                  玉葉集・藤原為兼
  秋霧のたえまをみればあさづくひむかひの岡は色づきにけり
                  玉葉集・藤原実経
  いづる日のおなじ光にわたつ海(み)の波にもけふや春は
  立つらん           続千載集・藤原定家


  朝日さすかたより霜のかつ消えてむらごに見ゆる庭の紅葉ば
                      細川幽斎


  わたの原とよさかのぼる朝日子のみかげかしこき六月
  (みなづき)のそら            加茂真淵


  船室の窓よりやはらかき朝日きたる、いでわがいとしき
  麦酒を呼ばむかな            若山牧水


  朝日かげさしの光のすがしさや一群(ひとむら)だちの
  福寿草の花               島木赤彦