指紋
指紋を個人の特定に用いる方法は、古代バビロニアや中国で物に拇印を残すなどから始まったようだ。日本で警視庁が指紋認証を導入したのは、明治期に日本にきたヘンリー・フォールズの研究がきっかけであった。フォールズは、明治6年に合同長老教会の医療伝道団の一員として来日し、東京の築地病院で働き、治療とともに日本人医学生を指導した。エドワード・モースの大森貝塚の発掘に参加して、発掘された土器に残された古代人の指紋に興味を持ち、指紋の研究を始めたのである。数千セットの指紋を集め、比較対照し、同一の指紋をもつものがないこと、物理的に除去したとしても再生すること、児童の指紋が成長によって変わらないことを確かめた。
亡き母の位牌の裏のわが指紋さみしくほぐれゆく夜ならむ
寺山修司
こだま号に忘れし眼鏡いくたりの指紋を付けて今日戻り来ぬ
星谷亜紀
花の種子賜ひて遠く病む人のはがきに淡き指紋つきをり
相良 宏
硝子戸に透く夕空が焙りだす捺したる覚えなきわが指紋
濱口忍翁
指紋がなまなまと皆生きをらんこの夜ダリアがうつくし
過ぎる 真鍋美恵子
薬液によりて指紋をありありとよみがへらしむること
人はする 真鍋美恵子