天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大佛次郎研究会

大佛次郎記念館にて

 昨日、神奈川近代文学館で開催された第25回公開発表会に出席して、テレビ映画「天皇の世紀」と小池光さんの講演「大佛次郎大池唯雄の往復書簡」を視聴した(短歌人会・花鳥さんのご紹介による)。テレビ映画は、1971年制作のもので、第一期・第2話「野火」をもとにしている。吉田松陰金子重輔の下田における渡米の企てを描いている。ペリー提督は、松陰の企てに感心したようだ。あまり出来の良い映画ではなかったが、先日、下田を訪ねたばかりなので、親近感を持てた。
 往復書簡の解説は、小池光さんの父上で直木賞作家の大池唯雄大佛次郎との交友に関するもので、小説家が世に出る経緯を知ることができた。九歳の小池少年が、初めて大佛次郎と会った時のエピソードも面白かった。父に連れられ、右上の写真の大佛次郎の書斎で挨拶した時、床にひざまづいて、両手をつき丁寧に頭を下げたという。また歌舞伎座に連れていかれて、うな重を御馳走になった時、大佛から「旨いか」と聞かれ、「これは鰻じゃない」と応えて、父が周章狼狽して、仙台では鱧を鰻と称して食べさしているので、子供が失礼なことを申し上げたと弁解して周囲を笑わせた、という。小池少年は、仙台の田舎で食べる鰻と比べて格段においしかったところから発した感想だったので、内心深く傷ついたとか。


  サングラス越しに見てゐるマニキュアの指が操作の
  携帯電話


  松陰の踏海の意図を聞きしときペリー提督は感動せしと
  大佛と大池の往復書簡集 小池光の解説を聴く
  九歳の小池比加児(ひかる)は大佛邸の床に手をつき
  あいさつせしと


  歌舞伎座うな重くひて九歳の小池は「うなぎじゃない」
  と応へし