天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

傘(1)

広重の浮世絵から

 傘は雨、雪、日光などから身を守るための用具。古来「かさ」とは笠を指し、傘は「差しがさ」と呼んだ。「笠」は、柄がなく頭にかぶるもの。対して「傘」には柄がある。漢字の形から違いが理解できよう。菅笠、翳(さしは)、笠、なにはすががさ、洋傘、からかさ、パラソル、蝙蝠傘 など多くの種類がある。難波は古くから菅笠の名産地であったという。翳(さしは)は貴人にさしかける長柄の団扇様のもの。


  おし照る難波菅笠(すががさ)置き古し後は誰(た)が着む
  笠ならなくに        万葉集・作者未詳


  渋谷(しぶたに)の二上(ふたがみ)山に鷲ぞ子産(こむ)とふ
  翳(さしは)にも君がみために鷲そ子産(こむ)とふ
                万葉集・作者未詳


  鶯の笠に縫ふてふ梅の花折りてかざさむ老い隠るやと
                 古今集・源 常
  春のきて思ひすてたるふる年やきのふの雨のなにはすが笠
                   下河辺長流
  とられじと風にすまへる菅笠にこぼしかけても散る桜かな
                    井上文雄
  楼門をいでてゆきたるからかさの明るく見えて雨あがるらし
                    村野次郎