波の歌(9)
波を用いた慣用表現がいくつかある。
波に乗る: 時勢にうまく合って進展する。調子にのる。
波を切る: 船などが、水をかき分けて進む。
波にも磯にもつかず: 中途半端である。
浅瀬に仇波: 思慮深くない者ほど、おしゃべりで騒ぎ
立てることが多いということ。
秋波を送る: 女性が男性の気を引くために、媚びた目つきで
見つめること。色目を使うこと。
海鳥の潜りしあとの修羅見せず朝の一湾波たひらなり
高尾由己
みちみちてもりあがる波たえまなき海のさかひを
はしる紅 大河原惇行
この岸にはじめて寄せし波のこと茫漠たりたまゆらの
にんげんひとり 立石和正
寄せ返し寄せ返す波を執念(しふね)しと心なげきす
むかしよりなる 前川佐美雄
問ふやうにうなづくやうに思索するやうに百たび
冬の波濤よ 高尾文子
小止みなく雪の降る湖ひたひたと引きゆく波を波が
打ちつぐ 古濱みち子