天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鳥のうた(12/12)

  見られゐることに気付かず蹲(つくばひ)の氷(ひ)を突く鳥の<一所懸命>

                       楠田立身

*蹲: 茶室に付属する露地に低く据え付けた手水鉢。客が手と口を清めるために使用する。

 

  ひそと来て宗旦椿の淡紅の葩(はな)食ふ鳥にわれはあこがる

                       脇坂初枝

*宗旦椿: 千利休の孫の宗旦和尚が、小僧が椿の花を落とした際に、小僧に取った優しい対応の説話にもとづくという。

葩: 草木のはな。花びら。

 

  つぴつぴとぴぴと茶の木に鳥は鳴きくもりにまろく丘もりあがる

                       後藤直

  風花のガラス戸越しに舞ふ中を光のやうに来る鳥の声

                     井谷まさみち

 *風花: 晴天に、花びらが舞うようにちらつく雪。

 

  水浴ののちなる鳥がととのふる羽根のあはひにふと銀貨見ゆ

                       水原紫苑

*あはひ: 物と物とのあいだ。

 

  いにしへは鳥なりし空 胸あをく昼月つひに孵(かへ)らぬを抱(だ)く

                       水原紫苑

  死ぬるまで愛しあふ鳥 死を越えて愛しあう鳥 白ふかきいづれ

                       水原紫苑

  雨光るゆふやみにしてはしりゆく恋とは羽毛ながき鳥かも

                       水原紫苑

 

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宗旦椿