つるばみ
どんぐりの古名で、漢字では橡と表記(「くぬぎ」と同じ)。辞書を見ると、次のような説明がある。
どんぐりの実またはそのかさを煮た汁で染めた色。灰汁(あく)媒染して薄茶色、鉄媒染して焦げ茶色や黒色に染める。また、その色の衣服。
A 奈良時代、家人・奴婢(ぬひ)の着る衣服の色。
B 平安中期ごろから、四位以上の人の袍(ほう)の色。
C 藤(ふじ)衣(ごろも)の色。喪服の色。
橡の衣(きぬ)は人皆事無しといひし時より着欲(ほ)しく
思ほゆ 万葉集・作者未詳
橡の袷(あはせ)の衣(ころも)裏にせばわれ強(し)ひめやも
君が来まさぬ 万葉集・作者未詳
紅(くれなゐ)は移ろふものそ橡の馴れにし衣(きぬ)になほ
若(し)かめやも 万葉集・大伴家持
橡(つるばみ)にぶらさがりゐる蓑虫が「あ、いや、しばらく」
などともの言ふ 永井陽子