月のうた(7)
一、二、四首目は擬人法。葛原妙子の歌で、燻製の鮪(しび)は窓辺に吊ろうとしたのであろう。下句が鮮烈。佐藤佐太郎の歌は、古典的な趣がある。山田あきの歌、影となり光となるのは、作者である。冨小路禎子の歌、月の持つ幻想性を描く。
月ひとり天(あめ)にかかりてあらがねの土もとほれと
照る光かな 小沢蘆庵
ほのかにも色蒼ざめて月ひとり空をあゆめり野にわれ
来れば 岩谷莫哀
燻製の鮪(しび)を吊らむとせしときに窓いっぱいに月は
ありたり 葛原妙子
浪の秀に裾洗はせて大き月ゆらりゆらりと遊ぶがごとし
大岡 博
かりそめの事なりしかど眠りたる女に照りし月おもひ出づ
佐藤佐太郎
影となり光となりて月の下幾つの路地のしずまるを行く
山田あき
眠らんとする窓に寄る白きかげ月より下りて来しけものなり
冨小路禎子