月のうた(12)
直喩の歌が三首(阿木津、宮本、濱口)、暗喩の歌が二首(清田)。これらの内、阿木津の作品は、わかりにくいのではないか。古代のおとめが仰いだように月のくれないを仰いだというのだが、古代のおとめを我々は知らない。想像を働かせるしかない。清純な鑑賞ができればよいが。
日のぬくみ残る草むらを歩み来て月の明かりに
おどろきにけり 三本松幸紀
あかときに耀く月のくれないを古代おとめのごとく
仰げり 阿木津 英
みづからの影をよろこぶ幼子とほほゑむやうな月の
出を待つ 宮本永子
草山の乳房のあはひ明るみて女帝のごとき月のぼりきぬ
濱口忍翁
野に棲めば桔梗刈萱賤が屋に琳派の月の出づるはうれし
清田由井子
やぶれたる襤褸の生きを恃むとき野辺なる月の献身も知れ
清田由井子