天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

枕詞概要(1/3)

早稲田出版

 古典和歌を鑑賞する時によく出会うのが、枕詞である。その全貌を解説した本に、内藤弘作『枕詞便覧』(早稲田出版)がある。3回にわたって、「一 枕詞について」の章を要約して、枕詞の理解を容易にしたい。

 枕詞と被枕との間に一定の約束あり。一つの詞の長さも五音が
 ほとんどと決まっている。


▽分類一  規則的類型的に
 (1)被枕の意味を修飾するもの
      あしひきの  のしづくに
      ひさかたの  のどけき
      あかねさす  紫野ゆき
      ちはやぶる  神代もきかす
 (2)比喩的に限定するもの
      なつくさの  深くも人の   (夏草の如く深く)
      ぬばたまの  のふけぬれば (射干玉のごとき暗い夜)
      わかくさの  もこもれり  (若草のごとききみのみづみづしい妻)
 (3)同音の反復または類似の音の連想によるもの
      はつかりの  はつかに声を聞きしより
      ねぬなはの  寝ぬ名は立てじくるないとひそ
      あさぢはら  つばらつばらにもの思へば
 (4)掛詞の関係で続くもの  
      あづさゆみ  はるの山辺を越えくれば (「張る」と「春」を掛ける)
      いもがそで  巻来の山の朝露に    (「捲く」と「巻来」を掛ける)
      たまくしげ  二上山に月傾きぬ    (「蓋」と「二上山」を掛ける)


▽分類二  掛かり方の面から
 (1)意味の関連によるもの
      あまさかる  鄙
      くさまくら  旅
      たらちねの  母
      すがのねの  長し
 (2)音の関連によるもの
      あしたづの  たづたづし
      ちちのみの  ちち
      つがのきの  いやつぎつぎ