雲のうた(26)
春の雲には、巻雲(すじ雲)や巻層雲(うす雲)がある。宮 柊二の未来は、来たるべき戦争を指しているようだ。サルバドール・ダリの絵で雲が明確に描かれているのは、「内乱の予感」「メランコリー」「雲の中の戦い」などがある。田谷 鋭がどの絵を思い浮かべたのか不明。
春空をおほふ薄雲ほのかにも光をふくむ朝より夕に
窪田空穂
水色の春の天(そら)ゆくうす雲と胸を流れるわが悲しみと
若山牧水
憂ふれば春の夜ぐもの流らふるたどたどとしてわれきらめかず
坪野哲久
春の雲いたづらにしてかがやけど夢々(ぼうぼう)惨々(さんさん)
として未来あり 宮 柊二
いつしかも丘に来りて浮く雲は国は相模にして春の雲
植木正三
ダリ死してこの雲を描く人もなし春の曇天のあまた白雲
田谷 鋭