天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲のうた(27)

春の雲(webから)

 春の雲の続きである。来嶋靖夫と辺見じゅんは、歌の形も心情も似ているようだ。鎌倉千和の歌で、「昼寝して」いるであろう主語は、雲である。「春楡のこずゑ」にかかって見える白雲からの想像である。


  春の雲見て帰り来し臥床にて痺れの戻る如くゐたりき
                    相良 宏
  花冷えとおもふ深夜の天頂にをりふし星をつつむ雲あり
                   川島喜代詩
  昼すぎて横雲の翳いくらかは濃くなりながら春の街の上
                    石岡正憲
  恃むべき明日ありとしも思へねど湧き立つごとき春の夕雲
                    来嶋靖夫
  抱き寄せる魂ひとつ胸ひとつ輝きて飛ぶ春の白雲
                   佐佐木幸綱
  日月のかなたといへどまなかひに朱をふくみたる春の浮雲
                   辺見じゅん
  春楡のこずゑに移り小気味よく昼寝してゐむ雲の白さよ
                    鎌倉千和