宇宙を詠む(3/5)
一首目は、百合の花の空間を宇宙とみなしたまで。二首目はどのように鑑賞すればよいか? 下句は何を意味しているか? 裸になった患者のようでもあるが。近藤の歌では「ともし」が分りにくいが、「とも(接続助詞)・し(副助詞)」として、「たとえ佇つとしても」と解するのであろう。例歌に見るように、宇宙は闇と結び付きやすい。
ゆふぐれの宇宙は百合のなかへ入りあまやかな疵
ほつかりひらく 日置俊次
往診の鞄おおきくひらかれて見れば宇宙のすはだは青い
佐藤弓生
老いの果ての心怖れに佇つともし宇宙の行方なき漆黒の闇
近藤芳美
宇宙とは胸のことなり埋めても埋めても無限の闇は終らず
青井 史
宇宙より地球を映せしエンデバー覗きしや地上に飢える砂漠を
和田一蓉
われらみな宇宙の闇に飛び散りし星のかけらの夢のつづきか
沢田英史
高山のくぼみに残る夏の雪宇宙の塵にかいたく汚るる
稲村恒次
[注]右上の画像は、NHK-BS「宇宙遺産100」の映像から借用。