宇宙を詠む(2/5)
岩井謙一の歌は、広島と長崎に落されたふたつの原爆の閃光を詠んでいる。「水ヲ下サイ」から理解できる。この時から現在まで71年が経った。今ふたつの閃光は宇宙の中で71光年のかなたを進んでいる。
宇宙より己れを観よといにしへの釈迦キリストも
あはれみ教へき 窪田空穂
滴らん寸前のこの輝きの宇宙のいのちまろまろとある
加藤克巳
天の川しらしら流れ地球昏し宇宙の律ぞいずべに傾く
山田あき
宇宙電波に白き影おくアンテナはさみどりの野に日を
かえしおり 前田 透
光速の及ぶかぎりを宇宙とふ漠たる悲哀のみなもととして
古谷智子
宇宙とふ無音の量(かさ)を思ふときわれ在ることの
〈声〉のごとしも 大塚寅彦
おそらくは今も宇宙を走りゆく二つの光 水ヲ下サイ
岩井謙一
[注]右上の画像は、NHK-BS「宇宙遺産100」の映像から借用。