天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

宇宙を詠む(2/5)

Arp273銀河

 岩井謙一の歌は、広島と長崎に落されたふたつの原爆の閃光を詠んでいる。「水ヲ下サイ」から理解できる。この時から現在まで71年が経った。今ふたつの閃光は宇宙の中で71光年のかなたを進んでいる。


  宇宙より己れを観よといにしへの釈迦キリストも
  あはれみ教へき           窪田空穂


  滴らん寸前のこの輝きの宇宙のいのちまろまろとある
                    加藤克巳
  天の川しらしら流れ地球昏し宇宙の律ぞいずべに傾く
                    山田あき
  宇宙電波に白き影おくアンテナはさみどりの野に日を
  かえしおり             前田 透


  光速の及ぶかぎりを宇宙とふ漠たる悲哀のみなもととして
                    古谷智子
  宇宙とふ無音の量(かさ)を思ふときわれ在ることの
  〈声〉のごとしも          大塚寅彦


  おそらくは今も宇宙を走りゆく二つの光 水ヲ下サイ
                    岩井謙一


[注]右上の画像は、NHK-BS「宇宙遺産100」の映像から借用。