天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海のうた(2)

現在の伊勢の海(webから)

 三首目の解釈に二通りがあるようだ。(1)恋人と過ごして海のごとく荒れた床とする場合、(2)恋人を独りむなしく待って荒れた床とする場合。
私としては、(1)をとり、一夜を共に過ごした恋人が、朝になって帰ってしまった後の空しさ・哀しさを詠んだものと解したい。


  草も木も色変れどもわたつ海の波の花にぞ秋なかりける
                    文屋康秀古今集
  敷妙の枕のしたに海はあれど人をみるめは生ひずぞありける
                     紀友則古今集
  わたつみと荒れにし床を今さらにはらはば袖や泡と浮きなむ
                      伊勢『古今集
  荒磯海(ありそうみ)の浜の真砂と頼めしは忘るることの数
  にぞありける          よみ人しらず『古今集


   伊勢の海に釣りする海人のうけなれや心ひとつを定めかねつる
                  よみ人しらず『古今集
  都にて山の端に見し月なれど海より出でて海にこそ入れ
                     紀貫之後撰集
  道しらでやみやはしなぬ逢坂の関のあなたはうみといふなり
                      下野『後撰集