天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

観音(2/3)

慈母観音(妻の木彫)

 以下の作品の内、原田、三枝、永井の歌は、観音像を見ながら周囲の状況との関わりを詠んでいる。いずれも清々しい世界が感じられる。対して、辺見、内野の歌は信仰の対象としての観音にすがる気持が現れている。内野の歌は、母が亡くなった時のことと分る。


  観音のすずしき眼みそなはし春野をゆらに月のぼりそむ
                     原田 清
  闇のなかに仄かにあかるみくる視野の慈母観音の春の
  てのひら               三枝浩樹


  じゃがたらの咲きたるまひる渡岸寺(どうがんじ)の
  くわんおんに問ふこと多かりき    辺見じゅん


  わが母を返し申さむ観世音勢至諸菩薩よ導き給へ
                    内野芙美江
  水瓶(すいべやう)に春の大和のうすあかり今汲みぬとて
  佇つ観世音              永井陽子