現代俳句の笑いーリフレイン
同じ音や文字を一句のなかでくり返し使用して笑いを誘うレトリックである。川崎展宏の全句集を通して、このリフレインのレトリックが最も多い。彼の一大特徴といえる。
(参考:オノマトペを除いて全2308句中176句で7.6%。入れると13.7%。)
夕焼けて指切りの指のみ残り
月明りこだまこだまの紅葉山
あめつちが撓む猫柳を撓め
蟻と蟻と蟻争へり掻きまぜる
涼しすぎぬ薩摩硝子の涼しさよ
西湖まづ覚め万緑を目覚めしむ
白むくげ白無垢八月十五日
千剣のつらら一剣の赤不動
惑星の重さ葡萄の房の重さ
取り皿に今年の冨士を取りにけり
パドックの砂塵たちまち春塵に
ものの音澄む齢の澄むといふことも
初蝶のやうに初蝶追ふ眼
ばら色の薔薇こそよけれ冬薔薇
この最後の句で、結句の薔薇は「そうび」と読むが、漢字の表記としてくり返されている。つまり音と表記でリフレインが使用されている。