橋のうた(4/6)
永代橋について。隅田川に四番目に作られた橋。元禄11年8月に5代将軍徳川綱吉の50歳を祝して開通したもので、現在の位置よりも100m程上流であった。文化4年、深川富岡八幡宮の祭礼日(深川祭)に詰め掛けた群衆の重みに耐え切れず、落橋事故を起こした。この事故について大田南畝が次の狂歌を詠んだ。
永代と かけたる橋は 落ちにけり きょうは祭礼 あすは葬礼
また「永代橋」という古典落語の元にもなった。
すれちがふ人ためらいもなき歩み橋の裏側まで陽はあたる
池本一郎
幾千の足音は石に滅びしをあかとき遠く橋かかりゐつ
清原令子
いま人をかならずむかうへ渡す橋汗ばみでわたる若者の群
葛原妙子
橋の上に人歩み去りふたたび橋は明るく宙に浮きにき
葛原妙子
永代橋ひとよのことは短くて一つの橋をいまに忘れず
坪野哲久
さまざまな形の橋をわたりしがわたりて楽しき街あらざりし
坂田博義
万世橋より眺望すれば春日町千石あたりの空に雪ふる
福島泰樹