相聞歌―時代と表現―(5/5)
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古典和歌における修辞の特色は、序詞的比喩、掛詞、本歌取などであった。近現代短歌になると掛詞や本歌取は少なくなり、口語(調)の表現が試されるようになった。和泉式部と俵万智の作品の比較及び与謝野寛と永田和宏の作品の比較から分るのは、相聞歌においては、折り目正しい文語よりも、生々しい口語が新鮮な力を発揮し得るということ。今後は口語のもとで序詞、比喩、掛詞、本歌取にあらためて取り組んでみることも興味ある課題である。例えば、清原元輔『後拾遺集』(恋)に、歌枕「末の松山」を詠みこんだ次の歌がある。
契りきなかたみに袖をしぼりつつすゑの松山波こさじとは
この下句は、八六九年貞観の巨大地震を踏まえている点、恋歌としてユニークである。こうした工夫を現代口語の相聞歌にも期待したい。
[参考文献]本文に記載したもの以外
馬場あき子『日本の恋の歌』〜貴公子たちの恋〜(角川学芸出版)
馬場あき子『日本の恋の歌』〜恋する黒髪〜(角川学芸出版)
俵万智『あなたと読む恋の歌百首』(文春文庫)