天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

むくげ

むくげ(底紅)

過去に何度かとり上げたが、ここではそれらと重複しない作品をとりあげる。
むくげは、漢字では木槿と表記するが、東アジア原産のアオイ科の落葉低木である。庭木や生垣として栽培される。8,9月に5弁の花が咲く。その色には、白、紅紫など。とくに真っ白な花で底部が朱のものを「底紅」と呼ぶ。右の写真がそうである。八重咲きの園芸品種もある。漢方薬木槿花は白花系統の蕾を乾燥したもの。朝開き夕べにはしぼむことから、「木槿一日之栄」とか「木槿一朝の夢」という成句がある。ちなみに中国語では「木槿」(ムーチン)、韓国語では「無窮花」(ムグンファ)という。


     川音や木槿咲く戸はまだ起きず    北枝
     町中や雨やんでゐる白木槿     松村蒼石
     底紅や黙つてあがる母の家     千葉皓史


  待ちつかれてひと去りたるか吸殻のごと花散れる
  むくげの木下            伊藤玲子


  木槿咲く角を曲がれと言はれしが先の角にも真盛りの花
                    木部眞代
  花の木となりたる木槿撓いてはもどる力に一樹かがやく
                   加島あき子