さまざまな直喩(9/13)
使用頻度一位の「如」句の構造は、「体言・の」如「き・体言」であり、二位は「体言・の」如「く・用言」であった。それぞれの例を茅舎の句で示す。
明月や碁盤の如き数珠屋町
「体言・の」如「き・体言」
寒の土紫檀の如く拓きけり
「体言・の」如「く・用言」
虚子だけが用いた「如」句構造に次の八種がある。
噂過ぐ時雨のすぐる如くにも
「用言」如「くに・助詞」
瓢箪の窓や人住まざるが如し 「用言・が」如「し」
石段の伸び行くがごと初詣 「用言・が」如「体言」
忘れられあるが如くに日向水 「用言・が」如「くに・体言」
左手は無きが如くに懐手 「用言・き」如「くに・体言」
水飲むが如く柿食ふ酔のあと 「用言・が」如「く・用言」
小春ともいひ又春の如しとも 「体言・の」如「しとも」
斯くの如く経来たりしぞ子規祭る 「斯く・の」如「く・用言」
同様に何人かの作者だけが用いた「如」句構造の例を以下に紹介する。
蕪村: 我家に迷ふがごとし春の暮 「用言・が」如「し・体言」
茅舎: 金屏風立てしがごとく焚火かな 「用言・が」如「く・体言」
たかし:金魚大鱗夕焼の空の如きあり 「体言・の」如「き・用言」
水仙や古鏡の如く花をかかぐ 「体言・の」如「く・用言」
誓子: 寺の古び月夜のけふのごときはなし 「体言・の」如「きは・用言」
草田男:葡萄食ふ一語一語の如くにて 「体言・の」如「く・助詞」
春灯(はるび)見送る四国へまでのバスの如き
「体言・の」如「き」
展宏: 身をよぢる如くに束ねられ紫苑 「用言」如「くに・用言」
骨壺は涼しきがごと墓に入る 「用言・が」如「用言」
裕明: もう一人我あるごとし麦の秋 「用言」如「し・体言」