天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

犬を詠う(4/12)

ローデシアン・リッジバック

  冬の犬コンクリートににじみたる血を舐めてをり陽を
  浴びながら               寺山修司


  老犬の血のなかにさえアフリカは目ざめつつあり
  おはよう、母よ             寺山修司


  このシロがあと幾年を生くるやと餌を与へつつ嘆きゐる妻
                      原 三郎
  日のくれに帰れる犬の身顫ひて遠き砂漠の砂撒き散らす
                      大西民子
  自転車に行く人の影犬の影犬の啼き声はみんな似てゐる
                      大西民子
  犬の鼻さきかわき春風に胸毛まずしくひかる胸板
                      山崎 孝
  しろき犬人に親しみあそぶさま深く見下ろす谷の部落に
                      川野弘之


寺山修司の二首目の老犬は、アフリカ原産種だったのだろうか? ローデシアン・リッジバックとかバセンジーとか。寺山は犬が大好きで、「ワグナー」「タロー」などと名付けて何頭かを飼っていた。
大西民子の一首目の下句も詩的といえるが謎めいている。
川野弘之は、山の稜線か峠を歩いていて、眼下の谷の部落を見下ろしているのだろう。懐かしい異郷を思わせる。
右上の画像は、ローデシアン・リッジバック。南アフリカ及びジンバブエ原産のセントハウンド犬種のひとつである。ホッテントット族が古くから猟犬として飼育していたホッテントット・ドッグとヨーロッパのマスティフタイプの犬の交雑であるとも。