天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「忍ぶ」 (2/4)

  身にこひのあまりにしかば忍ぶれど人の知るらむことぞ侘しき

                   拾遺集・読人しらず

*「恋心が身にあり余っているので、我慢していても人に知られることになるのは、侘しいことだ。」

 

  忍ぶれどなほしひてこそ思ほゆれ恋といふものの身をし去らねば

                   拾遺集・読人しらず

*しひて: むやみに。むしょうに。

 

  忍ぶれど色に出にけり我がこひはものやおもふと人の問ふまで

                    拾遺集・平 兼盛

  忍ぶべき人もなき身はある折にあはれあはれといひや置かまし

                   後拾遺集和泉式部

  恋しさを忍びもあへずうつせみのうつし心もなくなりにけり

                   後拾遺集・大和宣旨

*うつし心: 現実をしっかりと認識できる心。

「恋しさを我慢しきれずに鳴く蝉のように、私も声をあげて泣いてしまって――正気を失ってしまったのでしたよ。」

 

  しのぶれど涙ぞしるき紅にもの思ふそでは染むべかりけり

                    詞花集・源 道済

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