天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

果物のうたーはじめに

 このシリーズでは、小さな木の実や野菜に近いものは除き、また最近になって知られるようになった果物も除く。
 古代からある果物も古典和歌にはほとんど詠まれていない。具体的な食物を和歌に詠むことが少なかった理由は、食物や食べる動作を雅なものとは考えていなかったからではなかろうか。
 以下にこのシリーズで取り上げる果物について、概略を紹介しておく。作品の鑑賞にどれほど役立つか不確かだが、果物によっては、西洋文化の影響から、象徴するものがある。
[参考]フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』。画像は、webから借用した。

 

梨: 日本でナシが食べられ始めたのは弥生時代頃とされ、登呂遺跡などから多数食用にされたとされる根拠の種子などが見つかっている。アジア大陸から人の手によって持ち込まれたと考えられている。文献に初めて登場するのは『日本書紀』。西洋では、情愛、慰藉、長寿、気前の良さ などを象徴する。

桃: 桃は中国が原産で、中国では3000年以上前から食用として栽培されていたといわれる。日本では、縄文時代末期から弥生時代にはすでに食べられていた。古事記万葉集などに登場している。桃が象徴する概念には、結婚、沈黙、救済 などがある。

柿: 日本では有史以前から栽培されていたらしい。多くの品種がある。日本から1789年にヨーロッパへ、1870年に北アメリカへ伝わったことから学名にも kaki の名が使われている。

苺: 普通は食用のオランダイチゴを指す。「いちご」の語源ははっきりしない。古くは『本草和名』(918年頃)や『倭名類聚抄』(934年頃)に「以知古」とある。

葡萄: ヨーロッパ系の栽培品種は、中国経由で鎌倉時代にわが国に伝来した。日本にも野生種はある。葡萄は近現代短歌で多く詠まれるようになった。豊饒、喜び、復活、欲望、祭 などを象徴するという。

西瓜: 熱帯アフリカのサバンナ地帯や砂漠地帯が減産。中国の西方(中央アジア)から伝来した瓜とされるためこの名称が付いた。

蜜柑: 柑橘の原種は3000万年前のインド東北部のアッサム地方近辺を発祥とし、様々な種に分化しながらミャンマー、タイ、中国等へ広まったとされる。日本の文献で最初に柑橘が登場するのは『古事記』『日本書紀』。

林檎: 中央アジア原産で、日本には明治時代に導入された。大地、歓喜、笑い などを象徴。

枇杷 バラ科の常緑高木で原産は中国南西部。日本には古代に持ち込まれたと考えられている。

柘榴: ペルシャ・インド原産。石榴とも表記。日本には923年に中国から渡来したという。

レモン: インド原産の亜熱帯性柑橘類。日本のレモン栽培は明治6年静岡県で栽培が開始され、明治31年には日本のレモンの主産地である広島県芸予諸島和歌山県からレモンの苗木がもたらされた。豊饒、正調、再生、死、統一、和合 などを象徴する。

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古事記