果物のうたー梨(1/2)
梨棗(なつめ)黍(きみ)に粟嗣(あはつ)ぎ延(は)ふ田葛(くず)の後も逢はむと
葵(あふひ)花咲く 万葉集・作者未詳
*掛詞として、
黍(きみ)に粟(あは)つぎ --> 君に逢はつぎ
葵(あふひ) --> 逢う日
一首の意味は、「梨、棗と続くように、あなたに会いたい。葛のつるが別れて
またつながるように、またあなたに会いたい。あなたに逢う日は花咲くように
うれしい。」
をふの浦にかたえさし覆ひなる梨のなりもならずもねて語らはむ
古今集・東歌
*「「おふの浦」に片方の枝を覆うほどたくさん生っている梨は、「なし」
なのに「なる」と言うけれど、二人の恋が実るか実らないかは、まずは
一緒に寝て話し合おう。」
かたえさす麻生(をふ)の浦梨はつ秋になりもならずも風ぞ身にしむ
新古今集・宮内卿
*「片方へ枝を伸ばす伊勢の浦の梨は、初秋に実がなるのかならぬのか、
そのように初秋になってもならなくても風が冷たく身に沁みます。」
日本の梨淡くして透きとほる肌に貼りたる黄金(きん)のれつてる
葛原妙子
*一首全体で日本の梨の特徴を詠んでいる。金のレッテルとは梨の皮だろう。
汁たるる梨食ひ終へぬひたすらに寂しきものか妻と在ることの
小暮政次