天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

果物のうたー林檎(3/3)

  すりおろす林檎は忽ち錆びてゆきかすかに虫の飛ぶ音がする
                     大西民子
*なんとも孤独な生活を思わせる。

 

  林檎割れば林檎の種のこぼれ出(で)ぬ円(まろ)く小さく堅き林檎の種
                     都築省吾
  黄の林檎一つ置かれて輝ふに遠き風のみわれは聴きゐる
                    久方壽満子
  朝あさを籾(もみ)の中よりさぐり出すかそけき狩のごとしりんごよ
                     高安国世
  林檎より剥(む)かれゆく皮ゆらゆらと女体に沿ひて下降する見ゆ
                     高野公彦
*女性が林檎の皮をむいているさまを、作者はすこし離れて見ているのだが、
 女体と出て来るとこの女性は、裸であるような感じを受ける。

 

  王林もネロ二十六号もわれも子も昭和を生れて実るうつしみ
                     今野寿美
王林もネロ二十六号も青森県で交配により産出された林檎の種類である。
 王林(青色)は昭和27年、ネロ二十六号(鈍紅色)は昭和36年に世に出た。

 

     空は太初の青さ妻より林檎うく  中村草田男
     りんご撰るたのしさ咳を忘れゐて  目迫秩父

 

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林檎