小池光歌集『梨の花』(3/11)
■オノマトペやリフレイン
これらは快い韻律に寄与する。リフレインには、言葉の繰り返し以外に単音の繰り返しを含む。
いちめんの低き空よりひたひたと悲しきものは降りはじめたり
足の爪赤く塗りたる姉むすめ青く塗りたる妹むすめああ
病院庭(には)の満開のさくら見てゐたり雨にぬれてゐる病院さくら
崖(がけ)として人の齢(よはひ)はあるものか十七歳の崖六十七歳の崖
辛うじて立ちてゐざりて水のみに行きたる影も忘れざらめや
あこがれの銀山温泉露天の湯に長(なが)つかりしてくにやくにやとなる
山前(やままへ)といふ駅ありて二つの山三つの山を前にしてゐる
いつのまに年とりをりてこまごまと詞書(ことばがき)つく歌のうるさうるさ
目をあけてしばたたきしばしわが顔を見るがにしたりこの日の母は
鉛筆を削ること好きなこどもゐてえんぴつぐんぐん短くなるも
オノマトペについて、仙台文学館「小池光短歌講座」では、次のように語っている。
「オノマトペはものすごく印象が強いから、一首一箇所にしたほうがいい。オノマトペが二つ出てくるのはあまりよくない。」「オノマトペをカタカナで書くと目立ちすぎる。」「オノマトペは、上から下に流れる時にちょっとしたクッションになる。非常に大切な役割を果たす。」「当たり前すぎるオノマトペを使うと、歌の自立性が足りなくなる。」