身体の部分を詠むー髪(12/13)
さびしさにうそりうそりと増える髪肩に垂らして森のごとをり
日高尭子
髪を洗へば何をかを待つやうなこころひからせ樹雨(きさめ)がにほふ
日高尭子
髪短かく切り揃へ来し妹にフランネルのやうな子を返しやる
江口百代
エヴァの髪アドルフの髪ならび居り顎上げて塗るスキン・クリーム
加藤治郎
髪白くまじりてきたると寂しめば鏡の中のおのれが笑う
高瀬隆和
ある時は望遠レンズで見るやうに引き寄せて見る君の髪、腕
大崎瀬都
束ねゐる髪の根ふつと緩びたり古鏡のやうな月せり上がり
蒔田さくら子
日高尭子の二首目、江口百代、大崎瀬都、蒔田さくら子 の作品には、直喩「やうな」が使われている。また日高尭子の一首目には「うそりうそりと」という音喩(オノマトペ)が現れる。
加藤治郎の歌は、情景が特異に思えるが、例えば、下に挙げたような写真を見ながら、スキン・クリームを塗っていたのであろうか。