紅梅や入日の襲(おそ)ふ松かしは
燕(つばくら)や去年(きよねん)も来(き)しと語るかも
さくら一木(ひとき)春に背(そむ)けるけはひ哉
月光西にわたれば花影(かえい)東に歩むかな
*春の暁、月影が西に動くにつれて、花の影が東から現れてくる。漢詩を踏んで、対句仕立て。
行(ゆく)春(はる)の尻べた払ふ落花哉
雲を呑(のん)で花を吐(はく)なるよしの山
くれかぬる日や山鳥のおとしざし
*春の夕日に、山鳥は落し差し(刀のこじりを下げて差すこと)のように、地上に長く尾の影を落としている。
菜の花の土にやつるる岡辺哉
若草や藍(あゐ)より出(いで)て青二才
行春の鳥も蛙(かはづ)も泪(なみだ)哉
行春や水も柳のいとに寄る