天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕪村俳句と比喩―活喩(擬人法)(3/8)

     虹を吐(はい)てひらかんとする牡丹哉
     やどり木の目を覚したる若葉哉
     脱(ぬぎ)すてて一ふし見せよ竹の皮
     長尻の春を立たせて棕櫚の花
     鶯の音をや入(いれ)けん歌(うた)袋(ぶくろ)
*歌袋: 和歌の詠草を入れる袋。句の意味は、「鶯が鳴くのをやめたのは、歌を袋にしまいこんだからなのだろう。」なお鶯を歌人に擬える発想は、古今集の仮名序による。

     若竹や是非もなげなる芦の中
     麻を刈れと夕日このごろ斜(ななめ)なる
     かけ香やわすれがほなる袖だたみ
*かけ香(掛香): 匂袋。夏の季語。  袖だたみ: 両袖を合わせただけの簡便なたたみ方。掛香を忘れたかのように無造作に置かれた袖たたみの衣装を詠んだ句。

     貧乏に追(おひ)つかれけれけさの秋
     目に見ゆる秋の姿や麻衣(あさごろも)
*麻衣の印象を詠んだ。

     硝子(びいどろ)の魚(うを)おどろきぬ今朝(けさ)の秋

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棕櫚の花