天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが句集からー春(1/21)

平成四年 

     牡丹園傘さしたるが獅子頭

 

平成五年 

     青海苔を刈る浦波の朝日影

     黒猫や合掌造りの春の夢

     薄氷を踏めば思案のふつと切れ

     珈琲の香や受験子を送り出し

     春一番サッカーボールを追ふ一団

     観梅や老いの集へる大茶釜

     明王の剣見上げて福寿草

     白魚を飲み込む喉の仏かな

     卓に置く葉書は島の春を告ぐ

     合格のキャンパス巡る親子かな

     北の春藁屑つけて濡れ仔牛

     土佐の春とりどりに鳴く鶏多彩

     草餅をほほばりてゆく岬道

     打込みし竹刀は胴に冴返る

     春の潮外国航路沖にあり

     夜桜や女を泣かす一人劇

     七輪の薬缶噴きをり梅の花

     白梅や朱塗り古りたる仁王門

     菜の花の一群残る造成地

     電光の照らす夜桜匂ひけり

     音沙汰のなき墓のあり花吹雪

     渡殿をゆきつもどりつ花菖蒲

     溶岩を噴き上げし島椿咲く

     山笑ふ野に郵便車近づきて

     ボンゴレ浅蜊や雨のガラス窓

     空重し大凧揚ぐる保存会

     首もたげまた寝る犬や葱坊主

     喋りゐる燕一羽の孤独あり

     鴬や朱雀門より御所に入る

     路地裏にハイヒール来て椿散る

     つるはしのくひ込む砂利の雪解水

     見捨てられいよいよ育つ葱坊主

 

 

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青海苔を刈る