天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー水、お茶、コーヒー(4/6)

 茶の原産地は中国で、喫茶の風習が始まったのは古く、その時期は不明。「茶」という字が成立し全国的に通用するようになったのは唐代になってからだという。日本の茶は、805年に唐より帰国した最澄が茶の種子を持ち帰り、比叡山山麓の坂本に植えたことにはじまるとされる。

 

  茶を飲みて心静まれ長靴の重みが足につきて居るかな

                       島木赤彦

  茶まで断(た)ちて、

  わが平復(へいふく)を祈りたまふ

  母の今日また何か怒れる          石川啄木

 

茶を淹(い)れてわが子のまなこわらひ澄む煩悩の婦はまばたき止まず

                       山田あき

  さりげなく茶を呑み下すことすらもつかわるるものの抵抗なり

                       山崎方代

  わが湯呑仏の湯呑ならべ置き朝茶注げりたのしきごとく

                       君島夜詩

*「仏の湯呑」とは、先に亡くなった奥さんの霊に捧げるお茶用の湯呑であろう。まことに心にしみる情景。

 

  「ああ」と言ひ「うん」と肯き茶をすすり「体力つけろ」と言へり黙せり

                       河野裕子

 

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長靴