天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

虫のうた(2/5)

  さまざまにこころぞとまる宮城野の花のいろいろ虫のこゑごゑ

                      千載集・源 俊頼

*「さまざま」「いろいろ」「こゑごゑ」といったリフレインが心地よいリズムを作る。

宮城野: みちのくの歌枕。宮城県仙台市の東方一帯の野(国府のあったあたり)をさす。

 

  野べに鳴く虫もやものはかなしきと答へましかば問ひて聞かまし

                        山家集西行

  人は来ず風に木の葉は散りはてて夜な夜な虫は声よわるなり

                     新古今集曾禰好忠

  をざさ原夜半(は)に露ふく秋風をややさむしとや虫の鳴くらむ

                      金槐集・源 実朝

*をざさ原: 笹が生い茂っている野原。

 

  ことわりもなき物怨み我身にもあるが愛しく虫ききにけり

                          斎藤茂吉

  ともしびの笠に来たりてさ緑の翅(つばさ)をたたむ虫一つあり

                         尾山篤二郎

  あふむけに置けばたちまちはねあがる虫と遊べり枯草のなかに

                          山下陸奥

  虫一疋ひねり殺して寝てしまうああ人生は皮肉なりにし

                          山崎方代

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宮城野