さまざまにこころぞとまる宮城野の花のいろいろ虫のこゑごゑ
千載集・源 俊頼
*「さまざま」「いろいろ」「こゑごゑ」といったリフレインが心地よいリズムを作る。
宮城野: みちのくの歌枕。宮城県仙台市の東方一帯の野(国府のあったあたり)をさす。
野べに鳴く虫もやものはかなしきと答へましかば問ひて聞かまし
人は来ず風に木の葉は散りはてて夜な夜な虫は声よわるなり
をざさ原夜半(は)に露ふく秋風をややさむしとや虫の鳴くらむ
金槐集・源 実朝
*をざさ原: 笹が生い茂っている野原。
ことわりもなき物怨み我身にもあるが愛しく虫ききにけり
ともしびの笠に来たりてさ緑の翅(つばさ)をたたむ虫一つあり
尾山篤二郎
あふむけに置けばたちまちはねあがる虫と遊べり枯草のなかに
山下陸奥
虫一疋ひねり殺して寝てしまうああ人生は皮肉なりにし
山崎方代