天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戦争を詠むー終戦・敗戦(2/3)

  国やぶれ歌滅びなむといふこゑに我は答へきただ否とのみ

                        鹿児島寿蔵

  国やぶれて唇紅きマグダレナ昼の巷にもの怖れなし

                         山田あき

*マグダレナ: ヨーロッパ系の女性名。マグダラのマリアに由来。

 

  やぶれたる国に秋立ちこの夕の雁の鳴くこゑは身に沁みわたる

                        前川佐美雄

  国やぶれ山河のもみぢかくのごと紅かりしやとおどろきて見つ

                         石川信夫

*この歌も杜甫の『春望』を踏んでいる。

 

  銃身の菊花の章を潰せといふ敗れし日より五日目のこと

                         岡野弘彦

  敗れたるいくさの後を零落れきてこの白砂に涙おとしき

                         岡野弘彦

  しづかなる夕凪にして戦の終りし夏の苦しさ浮ぶ

                         大野誠

  十歳を頭に子ども八人を守れる母に終戦のとき

                         渡辺純子

 

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マグダレナ