天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

旅を詠む(4/6)

  逃亡のごと北へむくわが旅の遥か来たりてまたある峠

                      西勝洋一

  遠く来しもみぢの山にみづからの修羅見てめぐる 旅とはなに

                      畑 和子

*修羅: 醜い争いや果てしのない闘い、また激しい感情のあらわれなどのたとえ。

 

  頼られてゐしいく年ぞ長き旅なし得ずすぎし悔には触れず

                     生方たつゑ

  旅のをはりは命終(みやうじゆう)に似ん振れる手も地もたちまちに遠ざかりぬる

                     上田三四二

  旅にあるわれを呼ばはず病み臥して何思ひしや梅雨の二夜を

                      三國玲子

  旅すでに果てむとしつつ立待の月の赫きを共に言ひ出づ

                      馬場園枝

*立待の月: 立って待っている間に出る月という意味。陰暦17日の夜の月。特に、陰暦8月17日の月を指す。

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立待月