天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

稗(ひえ)

 縄文時代から食べられている日本最古の穀物で、かつて重要な主食穀物であったが、昭和期に米の増産に成功したことで消費と栽培が廃れた。ただ最近になって栄養価の高さから見直されている。

 

     雨がちに海の遅れ田稗多し       石田波郷

     ぬきんでて稲よりも濃く稗熟れぬ    篠原 梵

     遠不二に稗の抜穂をかかへ佇つ     木村蕪城

     稗の穂や昔を今に木曽路古り     鈴鹿野風呂

 

  打つ田には稗は数多(あまた)にありといへど択(え)らえしわれそ夜(よ)を

  ひとり寝(ぬ)る          万葉集・柿本人麿歌集

 

  水を多み高田(あげ)に種蒔き稗を多み択擇(えら)ゆる業(なり)そわが独り寝(ぬ)る

                     万葉集・作者未詳