天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

短歌人新年歌会

 例年のように神田の学士会館で、今年の歌会が開かれた。全詠草の中から各人十五首を選んで得点数を出す。面白い現象だが、編集委員たちの得点が例年大概に低いのである。
編集委員は、毎月それぞれ短歌人会員の投稿歌の選を担当し、歌壇で活躍している有名歌人たちでもある。一方、点の入りやすい歌というのはすぐわかる。無難なので採るという場合も多い。
以下、例をあげるが、一首の最後のカッコ内が得点である。本日の出席者は、161名なので、満点は161点なのだが。


  イヌ年の初日を浴びてひた走る猫ひろしこそ
  かなしかりけり(16)     藤原龍一郎
  *「こそ」の係り結びでは、「けれ」あるいは「ける」
   でなければ間違い。


  人の世のゆくへいよいよ見えずして雨にうづまる
  大滝根山(12)        小池 光                   
  *上句が採り難い原因かも。下句は魅力あり。


  若き日の小中英之、若き日の永田和宏、ひとりは
  死にき(4)          中地俊夫                   
  *小中英之と永田和宏では年が離れすぎているので、
   何故並べるのか不明。


  ねぢ巻けば鳴るもいつまでオルゴール嫋々の音(ね)
  を匿(かく)して古りて(5)   蒔田さくら子                 
  *「いつまで」に作者の思いが入っているのだが、
   読者にストレートには伝わらない。


これらに対して出席者の三分の一弱が採った最高得点の歌は次のもの。
  己が名も忘れし母を見つめゐる遺影の父よ軍服
  のまま(51)         五十嵐敏夫
                        
わが詠草も、好評ではあったが、点数はひどいものであった。
  あかあかと眠れる山の岩壁にロープ垂れたり
  人よぢのぼる
(8)
  *結句が平凡というか物足りないという印象があるが、
   作者の思いは、人間が見たのではなく、もっと高い神なり
   大自然の立場から見た純粋客観情景なのだが。


  初雪のふりて清しき一月の皇居の濠にかづく鵜の鳥
  初雪のしづく垂れたり橋下の濠の水面に波紋にぎはふ
        雪しづり水面にぎはふ橋の下